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バート・ウィートジェンス
Reading 03

チェンジメーカーに聞く、チャレンジを成功させる秘訣。

新しいアイデアを実現しようとするときに待ち受けているさまざまな困難。それを最も実感しているのは、世界の社会問題の解決に挑むチェンジメーカー(社会起業家)ではないでしょうか。この記事では、ANA BLUE WINGが支援しているチェンジメーカーに、彼らがどのように難しいチャレンジに向き合い、どう乗り越えているのか、その秘訣をお聞きしました。この記事が、仕事や人生において新しい挑戦を試みる方々へ、困難に立ち向かう勇気やヒントとなって届くことを願っています。

今回は、バート・ウィートジェンスとAPOPO(地域社会と協働し、トレーニングしたネズミを使ってより迅速かつ安全に地雷除去を行うNGO)の共同創設者であるクリストフ・コックスにお話を伺いました。

悲しみや怒りに捉われず、未来を描く
「ヒーローラット」とともに、地雷問題に挑む

画像今こうしている間にも、世界各地ではさまざまな紛争が起こっています。たとえその争いが表面上終わったとしても、その土地には地雷などの爆発物が地中に埋められたまま、とても危険な状態で放置されていることがほとんどです。2020年には50以上の国で、7,000人以上が地雷の犠牲になりました。そしてその死傷者のおよそ半分は、まだ幼い子どもたちなのです。
地雷を除去することは、再びその土地で、安心・安全な人々の営みが育まれていくための第一歩になります。

しかし、地雷除去は作業する人にも多大な危険が伴う難しいもの。各地でなかなかその作業が進まない中、APOPOは画期的な解決策を見つけ出しました。
それは、ネズミを訓練し、その嗅覚を使って爆発物を見つけ出すという手法。
危険を伴わず、的確に爆発物の場所を探り当てるその救世主を、APOPOは「ヒーローラット」と名付けました。2021年末までに「ヒーローラット」が発見した爆発物の数は15万個以上。700万平方メートル以上の土地に平和を取り戻したのです。
そんな画期的な取り組みを行ってきたバートとAPOPOに、問題にぶつかった際にどのように解決に導いていくのか、具体的なアクションや考え方を伺いました。

重要なのは「何(what)」ではなく「どのように(how)」

社会を変える仕事では、「何(what)」よりも「どのように(how)」が重要なのだとバートは言います。社会・環境問題に取り組むこと、つまり「何」をするのかはもちろん重要です。しかし世界を変えようとするなら、「どのように」その問題に取り組むかの方が重要なのです。

特定の問題の解決を目指すプロジェクトでは、問題を徹底的に分析することから始めるのがバート流。そして、その際バートにとって重要な役割を果たすのが“座禅”です。座禅をすると心が静まり、物事を正確に分析することができ、エンドユーザーが本当に必要としていることが分かるのです。「解決方法は自然に浮かぶ」とバートは言います。

世界各地の地雷問題に対してさまざまな角度からアプローチをすることは可能ですが、バートは綿密に分析した結果、一番の課題は「どのように」地雷を探知するのかだという結論に達しました。

地雷を除去し土地を解放(ランドリリース)するには、何段階にも及ぶプロセスがあります。
その第1段階となるのが地雷原の調査です。どこに地雷原があるかを特定する作業が、特に難しく、時間がかかるものでした。
そこで、バートが目をつけたのが「ネズミ」。トレーニングし、嗅覚を研ぎ澄まさせたネズミを現場に投入することで、安全で迅速に地雷原を発見できると考えたのです。

思いやり、好奇心、創造力、勇気を持って行動する

画像悲惨な問題に直面した時に、悲しみや怒りを感じるのは自然なことです。しかし、その側面ばかりに目を向けていると、怒りや恐怖、悲しみなどの感情に捉われてしまい、よりよい未来を思い描くことができません。
問題が大きいからこそ「どう解決するか」を考えることが重要になるとバートは言います。思いやり、好奇心、創造力、そして勇気を持って問題を考えてこそ、私たちは変化を生み出すことができるのです。

バートとクリストフは大学で製品開発を学びました。製品を開発する時は、絵や図を使って何度も製品のコンセプトを描きます。バートが「ネズミをトレーニングして地雷を探知する」というアイデアをクリストフに伝えた手紙にもネズミの絵が描かれていました。こういった相手にとってわかりやすく創造力のある手法は、大学での専攻の経験を活かし生まれたもの。クリストフも、ネズミのケージのデザインをメーカーに伝える時には自分で描いた図面やスケッチを見せるそうです。

製品開発ではラテラルシンキング(水平思考)も重視されます。ラテラルシンキングとは、思いがけないものからインスピレーションを得てアイデアを生む思考法です。こうしたチャレンジングな考え方は、これまでバートを導いてきた「すべての物事は深くつながり合っている」という自身の哲学とも共鳴しています。

エンドユーザーを起点に考える

画像バートは常にエンドユーザーのニーズを特定するところからプロジェクトを始めます。APOPOにとってのエンドユーザーは、グローバル・サウス(南半球を中心とする開発途上国)の小規模な農家。彼らは長年残留地雷の問題に苦しんできました。

APOPOの目標は、外国からの高額なノウハウや輸入機器を用いることなく、農民が自立して問題に取り組むことができるようなソリューションを提供することです。そのためには「地元で手に入る再生可能な天然資源を用いた適切な技術」が必要だとバートは話します。その結果たどり着いたのが嗅覚の鋭い動物、そう、ネズミでした。

APOPOの運営もまた、エンドユーザー起点の考え方で行われています。職員の97%がエンドユーザーであり、地雷に苦しむ人々がいるさまざまな地域で働いています。現場でエンドユーザーや地元の専門家、同じ問題に取り組む組織と一緒に仕事をすることで、単にノウハウを提供するよりも、より良い未来への可能性が高まるのです。

「ヒーローラット」のように、たくましく生きる

画像ネズミはたくましく、賢い生き物です。もらえるご褒美は必ずもらい、チャンスを決して逃しません。このネズミの精神も、バートの考え方に通じるものがあります。

APOPOはグローバルに活動しているものの、ニッチ市場を対象とする小さな組織なので、政府からの補助金といった公的で長期的な資金援助を受けることができません。代わりに、立ち直りの早さと機動力を武器に、あらゆる機会を逃すことなく、1年、また1年と活動を続けてきました。

バートは幼い頃からこうしたやり方に慣れていました。家が貧しく、お小遣いをほとんどもらえなかったため、ネズミを育ててペットショップに売ったりしていたのです。そんな子ども時代の経験が、APOPOの基盤となるアイデアにつながったのかもしれません。これもまた「物事が深くつながり合っている」ことの一例と言えるでしょう。

すでにAPOPOは組織として成熟してきており、戦略的に計画を立てて行動する余裕がでてきました。もちろん困難に直面することもあります。しかし困難は学びを得る機会でもあります。バート曰く「失敗など存在しない」のです。

APOPOのこれから

画像現在APOPOは、急速に活動が拡大しており、それに対応するために、人材育成とキャパシティビルディングへの投資を積極的に行っています。

2022年にはアゼルバイジャンでの活動をスタートするほか、ラオス、ベトナム、ミャンマーでの活動開始も視野に入れています。セネガル、コロンビア、ウクライナからも緊急かつ具体的な要請を受けています。さらに、運用開始前の段階ですが、新たなプロジェクトとして、捜索・救助活動や土壌汚染の検知、税関での違法な野生生物製品の探知などを行うネズミのトレーニングもスタートしています。

世界を救う「ヒーローラット」の活動は、まだ始まったばかりです。

All images copyright © APOPO

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バート・ウィートジェンス

地雷や病気などの危険を嗅ぎ分けることができるアフリカオニネズミの訓練を通じて、コミュニティに安全な土地を取り戻し、人々を脅威から解放します。

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